| 088) 輝夜
「三蔵、寒くない」 「いや」 「お茶、入れたよ」 「ああ」 自宅のテラスで、デッキチェアに座る三蔵のそばへ茶器のトレイを置くと、悟空は隣へ腰を下ろした。 「真ん丸だね」 「そうだな……」 つぶやいた三蔵の肩へ悟空がそっと頭を乗せると、大きな手が胡桃色の髪を優しく撫でた。 若くして巨大企業の社長を務める三蔵は、当然休日も無いに等しい。 その彼が、夜も早い時間から自宅に居るのは、本当に珍しい事だった。 「これね八戒から貰ったんだ」 お茶と一緒に出されたのは丸い形の焼き菓子。 「月餅か」 「うん、甘さを抑えてあるから三蔵もどうぞ、って言ってたよ」 笑顔で差し出されれば、普段甘いものを食べない三蔵も自然と手が伸びる。 三蔵が口へ運ぶのを待ってから、 「美味しい?」 悟空が首を傾げる。 「まあまあだな」 その答えに悟空の笑みが深くなる。 三蔵の「まあまあ」はつまり、美味しいということだ。 そして悟空も一口。 「ホントだ、美味しい」 ごま餡の香りと味が口に広がり、歯ごたえの良い胡桃が後を追う。 八戒の「僕の一押しですよ」と言った通りの美味しさだった。 「三蔵が傍に居て、美味い菓子があって、月が綺麗で、俺幸せだなあ」 悟空の言葉に、三蔵が苦笑いをこぼす。 「安上がりな幸せだな」 「いいの」 ぷうと膨れながらお茶を飲む悟空の肩を、三蔵が抱き寄せた。 「明日、旅行の用意をしろよ」 「三蔵?」 「日曜から一泊しかできねえが、休みが取れた」 三蔵の思いがけない一言に、大きな目がさらに開く。 「本当……」 「ああ」 大輪の花が咲くような悟空の笑顔。 三蔵の表情も優しくなる。 この笑顔は、自分だけのものだ。 守るためなら、何だってしてみせる。 「一泊だから、遠出は出来ないがな」 「三蔵が一緒ならどこだっていい」 悟空の大きな瞳が揺れた。 そして、三蔵の手が丸い頬に触れる。 「ありがとう三蔵。 すごく、嬉しい」 幸せそうに笑う悟空をそっと抱きしめる。 「ずっと、ここに居ろよ」 「うん……ずっと、ずーっと三蔵のそばにいるよ」 固く抱き合った二人のもとへ、天上から月のしずくが静かに降り注いでいた。 おわっとけ
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| 月と三空 一番好きな組み合わせデス 花淋拝
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