#05 側にいるのに……


 気が付かなくて、ごめんね…―――三蔵


 三蔵の忙しさは帰って来てからも変わらなくて、煙草を咥えて、文句を垂れて、時々サボりながら、執務をこなしてる。
 俺は…トモダチが出来た。
 そいつは三蔵の傍仕え愁由と同じ故郷で、名前は怜玄(りょうげん)。俺と同じ歳。俺の金瞳の事なんかこれっぽちも気にしないで、誰と変わりなく付き合ってくれるんだ。
 怜玄はこの寺院に来る前は、いろんなトコを旅していて、怜玄は自分の旅の話を俺は三蔵たちとの旅の話をよくした。それこそ時間を忘れて。


「楽しそうですね」
「同じ年頃のヤツと接するのは初めてだからな」
「良い話し相手になっているようです」
「仕事がはかどるな」
 そんな会話を三蔵と愁由がしていたなんて、少しも知らなかった。
 その時の三蔵の顔も―――


「でな、その娘さんの両親がすっげー怜玄を気に入って、修行なんか止めて婿になってくれって大変だったんだってさ。そうだよな、怜玄は良いヤツだもん、誰だって好きになるよ」
「……―――」
「三蔵?聞いてる」
「…ああ」
 三蔵と二人だけの夕食(は、旅に出る前から変わらないけど)。
 話題はもっぱら怜玄の事、でも何か変なんだよな。なんか、こう、三蔵の様子って言うか態度っていうか、俺が怜玄の話をする時は、上の空な時が多い。
 三蔵は怜玄を嫌いなのかな。


「てな感じなんだけど、愁由どう思う」
「…悟空」
 三蔵の態度が気になった俺は、次の日こっそりと愁由に相談してみた。そしたら、
「悟空は最近、三蔵様に自分の事を話しますか?」
「俺の事?」
「そうです」
 言われて俺は、そういえばと頭を捻る。
 この頃、怜玄と一緒に居ることが多くて、八戒たちんトコにも裏山も行ってない。
「…怜玄の、事…ばっかりだ」
「三蔵様はいつだって悟空の事を気にかけておいでです。困った事は無いか、辛い仕打ちはされていないか」
「うん…」
「悟空の傍になかなか居られないからこそ、ご自分の見えないところで悟空が何をして、何を感じているか、三蔵様は知りたいと思っているのではないですか」
 愁由の言葉は優しかったけど、俺にはすごく重かった。
 俺はずっと、自分の事しか考えてなかったんだ。
「三蔵に悪い事した…」
「三蔵様は…怒ってはいらっしゃらないかもしれませんが、きっと寂しい思いをなさっていますよ」
「うん…」
 愁由の言うとおり、三蔵は自分の気持ちを言葉にする事はあまり無いけど。
 今は寂しいと思っている。ハズ―――
「ありがとう、愁由」
 俺は愁由にお礼を言ってくるりと執務室へ向かった。


「三蔵…いい?」
 ノックの後に静かにドアを開けて中を覗きこむ。
「仕事中だ」
「うん、分かってる…けど」
 俺は薄く開いたドアから身体を滑り込ませて、ゆっくりと近付くと三蔵の背後へ回った。
「おい、仕事中だ」
「うん」
「重い、どけ」
「うん」
「おい」
 三蔵の後ろから椅子の背もたれごと抱きつく。
「三蔵の匂い」
「気色悪い」
「いいの、充電だから」
 そう言ってぎゅっと抱きつく力を強くした。ら、
 溜息の後に「こっち来い」という声。
「えへへ、さぁんぞ」
 前に回って膝上に乗り上げて、また、ぎゅうぅ。
「ガキ」
「いいもーん」
 くすくす笑って胸元へ擦り寄ると、背中に回った三蔵の腕もぎゅうぅ。
「三蔵」
「……」
「大好きだよ」
「…知ってる」
「うん…―――だから…ちゅうして」
 強請ってみたら、ゆっくりと俺の上に影が降りて…。


 キスの後、俺は自分も寂しかった事に気付いた―――




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