77) 左側 

 常に三蔵の傍を離れることのない悟空は。

「ああっ!それ俺が喰おうと思ってたシュウマイ!」
「早いもん勝ちだ」
「んだとぉぉぉ、この河童!!」
「うっせー、このチビ猿」
 まあこれは食事時の変わらない一幕ですが…
「てめえら、メシは静かに喰えと何度言やぁ…―――」
 と、三蔵のこの一言もお約束で…最終的に「必殺のハリセン」が飛び出すのですが、
「うわっ!」
「猿!避けんじゃねえっ」
「避けるに決まってんだろ!」
 食事の時に限っては悟空はけして三蔵の傍には、と言うか「ハリセンの射程距離」以内には座らないのです。



「ったく、後から後から後から…」
「悟浄、口より手を動かしてください!」
「なあなあ三蔵、俺、一番敵倒したから今度の町に着いたら、メシ奮発してくれよな」
 そんな事を言いながら、悟空は如意棒を振るい三蔵の背後に立ちます。
「大喰い猿が、何言いやがる」
「だーかーら、猿じゃねえってのっ!」
 悪態をつきながらも、戦闘中、三蔵が昇霊銃に弾を込める時は必ずその背を、悟空は守るのです。



 そして、
「この先は山越えが続きますから、次の町で十分な補給と休養を取ったほうがいいと思いますが…」
「ああ、ぜひそうしてくれ」
「……」
 焚き火を囲んでルートの相談をする時、悟空はじっと三蔵の傍で僕ら三人の話を聞きながら、
「悟空?」
「寝たな、やっぱり」
 僕の呼びかけにも悟浄の言葉にもその瞼は動かず、三蔵の腕に寄りかかって、静かな寝息を零すのです。
「昼間の戦闘が効きましたね」
「ま、あれだけ動けばな」
 悟浄の呟きに僕は笑いながら、三蔵に毛布をわたしました。受け取った彼は、そっと悟空の頭を自分の膝へ下ろすと、毛布で包み込みます。
 普段、引っ付くなと怒るくせに、眠ってしまった悟空を突き放すことはけしてしないのです。


 三蔵の右手は銃を握り、煙草を持ち、ハリセンを振るうのですけれど。彼の左手は、そこで身体を休める悟空を抱き寄せ深茶の頭を優しく撫で、その眠りを守っているのです。
 そして次の朝、僕たちはまた地上の太陽に巡り会います。

「おはよう三蔵!八戒、悟浄!」
 三蔵の左側。そこは悟空にとって大切な、安息の地なのです。


おわっとけ


copyright(c)karing/Reincarnation


back window close next


三蔵は二人の前でも、悟空を甘やかす時はしっかりきっちり甘やかすのです(笑)
花淋拝

back : 【あんずいろapricot×color】
button : 【M-SPIRAL】