75) 遅刻(side:G) 

 待ち合わせに遅れて行くのには、訳があるんだ。

(居た…)
 公園のオープンカフェ、向かって右側から二つ目のテーブル。お日様に金糸を弾かせて、ああ、眉の間に縦皺が一本。
 それを俺は時計台の下から、こっそりと見ている。あのテーブルからここは死角だから、三蔵から俺は見えない。
 他のテーブルの客がチラチラと三蔵の様子を伺ってるのを、本人は気付いてるのか、いないのか。
(や、絶対に気付いてるハズ)
 誰だって三蔵を見ずにはいられない。そうして気が付けば、一人の女の人が三蔵に近づいて行った。
 身体のラインが判る服装は、自分に自信がある証拠。サラサラのストレートはまさしく今流行の撫子美人だ。
 だけど、俺は知ってる。その人が三蔵のタイプ(あれ?三蔵のタイプってどんなんだ)じゃないって事。
 何を言ってるかは聞こえないけど、三蔵はずっと前を見据えたまま、その人を見ようともしない。そろそろ時間だな。
 声を掛け続けたその女性が三蔵の腕に手を置こうとした瞬間。
「三蔵!」
 俺の声に三蔵が立ち上がった。俺は駆け寄って、その広い胸に飛び込む。
「遅いぞ」
 三蔵はゆっくりと両腕を俺の背中に回した。
「ごめん」
 俺は甘えるようにその胸に擦り寄って、両腕を三蔵の首に絡めて、そっと頬にキスをする。
「遅くなっちゃうから、いこ」
 俺の腕は三蔵の首の後ろ。三蔵の腕は俺の腰。周りなんか気にしない。
「いや、今日は帰る」
「えー」
 三蔵の言葉に頬を膨らませてみるけど、本当は分かってたんだ。「帰る」って言い出すこと。
「遅刻した仕置きをしないとな」
 これにはちょっと予想外だったけど。
「それと―――」
 三蔵がニヤリと哂った。
「こんな茶番に付き合ってやった礼もしてもらうからな」
「え?」
(あれ…バレてる?)
「たっぷり可愛がってやる」
「あぅ…」
 ちょっとどころか、かなりの予想外だったけど、三蔵の肩越しにあの女の人が目に入った瞬間、俺はするりと三蔵の腕に自分の腕を絡ませ、
「帰ろ、三蔵」
 甘えるように笑った。





おわっとけ


copyright(c)karing/Reincarnation_2008



たまに強気な悟空もアリ?
三蔵のタイプは、金瞳の甘えっ子だよ
花淋

   


使用素材 : 【10minutes+】