74) 遅刻(side:S) 

 待ち合わせに遅れて行くのには、理由(わけ)がある。

 待ち合わせは、公園のオープンカフェ。
 柔らかい日差しが金瞳に光を与え、風が胡桃色の髪を撫でていく。
 アイツの位置から俺は見えない。悟空は辺りを探すように視線を走らせ、時計を確かめてまた俯く。と、そこへ近づく人影が二人。
 人の良さそうな笑顔を浮かべ、けれどその目にはっきりと別の目的を抱いて。
 話す声は聞こえないが何を言っているかは、その顔を見れば容易に判断が出来る。声を掛けられたアイツはと言えば、困惑した顔で俺を探していた。俺はゆっくりと歩き出す。そして、男の手がアイツの肩に掛かろうとした、まさにその瞬間。
「悟空」
 上がった顔と振り返った顔。
「三蔵っ!」
 その男の手からすり抜けるように立ち上がった悟空が俺に飛びつく。
「遅いよ…」
 微かに震えた声が非難の言葉を紡ぐ。その腰に腕を回しながら、
「悪かった」
 いつもより潤んだ金瞳の端に口唇を寄せて囁く。
 安堵の笑みを浮かべた悟空を、男たちから隠すように抱き寄せ歩き出した。
「時間は平気か?」
「うん」
 甘えた声で返事をして、けれど悟空は「でも…」と俺を見上げた。
「どうした」
 歩みを緩め、それでも抱き寄せた身体はそのままに問い返す。と、
「今日は、うちに帰ろう…」
 見上げてきた金瞳の奥に熱を感じた。

「遅れた分、たっぷりサービスしてやるよ」
 周りの視線などお構い無しに、耳元に口唇を寄せて熱い吐息を吹き込んでやれば、小さく身震いした悟空が、
「…バカ」
 と頬を染めて微かに笑った。




おわっとけ


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この勝負、どっちの勝ちなんだ?(ヲイ)
花淋

   


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