お礼閑話
  時々、思う事がある…
 この二人と旅に出たのは、間違いだったかなぁ。と…
「遅い」
 開口一番一言。言われた方はムッツリとその人を睨み付けた。
「誰の所為だよ」
 仲間内で誰よりも笑顔が似合う少年は、ふくれっ面を更に増して、目の前の朝食にかぶり付いた。
「先に寝たのはお前の方だろ」
 余裕の表情でのたまった金の人に、
「あーゆーのは、寝たって言わねーだろ」
 少年は顔から火を噴いて叫んだ。
「それが後始末までしてやった、俺に対して言う事か」 
 この台詞には、傍観者を決め込んでいた、二人の仲間でさえ目を剥いた。
「イヤだって言ったのに、ムリヤリ三蔵がシたんだから、それくらい当然だっ!」
「ほう、イヤがってるようには、見えなかったがな」
「イヤだったの!」
「悦んで腰振って、啼きながら「もっと」って強請ったじゃねえか」
「三蔵が言えって、ゆったんだろっ」
「言ったのはお前だ」
「言わなきゃ三蔵がイカせないってゆーからだ」
 異次元の会話を続ける二人を呆れたように眺めている残された二人の仲間。気がつけば、食堂からはすっかり人影が消えていた。
「なぁ…」
「何ですか」
「いい加減、止めてやれよ」
「おや、面白いじゃないですか」
「冗談…あんなのと一緒にされたくねーよ、俺は」
 西への道のりは、遠く険しい――――


真昼の闇
確信があったわけじゃない――――

「出発は明後日だ」
俺の言葉に三様の表情で頷いた仲間をそこへ残し、一人宛がわれた部屋へ向かう背後から、追いかけて来る聞きなれた足音。
「三蔵…」
音になる声も、心に直接響く声も、普段よりもずっと不安を孕んでいた。
何も言わずに扉を開けて中へ入ると、悟空は部屋と廊下の境目で止まったまま。
「中へ入って、さっさと扉を閉めろ」
言えば音を立てて閉まった扉。振り返った同じタイミングで飛び込んできた身体を抱きとめてやれば、怯えたように全身を振るわせる悟空。
「三蔵、三蔵…さんぞう」
「大丈夫だ」
「なに…何、コレ…分かんね」
「俺から離れなければ大丈夫だ」
「でも…でも」
「俺を信じろ」
「三蔵…」

闇の力を蓄えた黒い太陽。
変化はゆっくりと始まっていく。
尖った耳と鋭く伸びた爪。腕に食い込むその痛みは、悟空の痛みだ。
「三蔵…金蝉…三蔵…」
「ここに居る」
お前一人が苦しまなくてもいい。あの時、お前を一人にしたのは俺の罪だ。
「大丈夫だ悟空、俺はここに居る」
もう、あの日のようにお前を一人にはしない。

今度こそ、最期の時まで共に在るとお前に誓おう。

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