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天使の微笑み
「さんぞーなんてもういいもん!!」
「さんぞーのばかぁ!!」
ぅうわ〜ん
はいぃぃいい?!?!?!?!
今なんと?
「聞きましたか?今の・・・」
「ええ。何かあったのでしょうか?」
心配です。そう言って手にしていた箒を投げ出して、声のしたほうへと駆け出していった小坊主たち。いったい悟空の身になにがあったのか・・・不安が募る。
「悟空さんのお姿見えますか?」
「いえ・・・三蔵様ならいらっしゃるようですが」
執務室に悟空が居ないとなると、一体何処へ行ったのか?
泣き叫んでいたし、心配ですねぇ。
「三蔵様は何をなさっているのでしょう」
椅子に腰掛け、仕事をしている風には見えない。ただ、煙草をふかしているだけ。
そして、何時もの不機嫌極まりないオーラを纏っている。
二人の些細なケンカは何時もの事。だけれど、悟空があんな大声で叫ぶなんて事は滅多にないのだ。だから早く見つけて、三蔵様に迎えに行ってもらい、仲直りをしていただきたい。
キョロキョロとあたりを見渡して、悟空の姿を探すが、その気配さえ感じない。
三人はそれぞれ心当たりを探すために、一旦この場を離れて行った。
小坊主たちが誰に頼まれたわけでもないのに悟空を全力で探しているであろうその頃、執務室では三蔵が後悔の念に襲われていた。
悟空が飛び出していった原因。それは己にあるのだ。
一ヶ月前にした約束を、公務などの忙しさの中ですっかり忘れていたのだ。これは自分の落ち度。
悟空が怒るのも無理は無いことなのだが・・・
重要書類だけを終わらせて、午後からでも一緒に出かけよと譲歩してやったのに、何なんだ!!あのバカ。
・・・・・・いや、バカは・・・俺、か
--さんぞーのばかぁ--
--楽しみにしてたのに--
--さんぞぉ--
途切れることなく聞こえてくる声に、小さく舌打ちして、先ほど吸い始めたばかりの煙草を灰皿へと押し付けると、ようやく椅子から立ち上がった。
「ったく、呼ぶのなら出て行くんじゃねぇよ」
しょうがねぇな。
結局のところ、何があっても、何をおいても悟空が大事なのだと感じる自分に苦笑する。
あっ!あれはっ
裏山を見に来た小坊主が、桜の幹に寄りかかる大地色の髪を見つけた。
そしてそれを報せに行こうとして振り返ると、他の小坊主たちもこの場に来たのだった。
「あそこです」
影に隠れて指をさしながら悟空の姿を見守る三人。
桜の幹に寄りかかり、俯いているその姿はどこか寂しそうで、泣いているように見えて、キュンと胸が痛くなった。
「早く来て下さるといいのですが」
誰がとは言わなくても、それが最高僧であることはこの場に居る三人には分かっているから、ただただ頷いて祈る。早くいつもの悟空さんの笑顔が見たい、と・・・
それから少し経ってから、足音が聞こえて来た。
--来て下さった--
この瞬間、小坊主たちは三蔵の登場により、ホッと胸を撫で下ろす。
そして、それまで俯いていた悟空がほんの少し顔を上げた。
「泣いてんじゃねぇよ」
低音の声で桜の幹に寄りかかる悟空に言う。
--もう少しお優しいお言葉、出てこないのですかねぇ--
--あれが、三蔵様・・・なのですよ--
--そうですけど、でも--
三蔵の優しいと感じられない言葉に思わず苦笑してしまう三人。
でも、そんな三人のことなど知らない悟空は、三蔵の声が聞こえると、先ほどまでの寂しそうな雰囲気など一気に吹き飛んでいて、嬉しそうな笑顔を覗かせていた。
--悟空さん、何だか嬉しそうですね--
--ええ。やはり悟空さんには笑顔が似合いますね--
--そうですね--
何が原因でケンカをしたのか分からないけれど、悟空に似合うのはあの太陽のような微笑なのだと、。
あの微笑が周りの者たちを幸せな気持ちにさせてくれるのだ、と改めてそう感じた小坊主たち。
「別に、忘れてたわけじゃねぇよ」
本当は忘れていたのだが、そんな事は死んでも言えない三蔵は不機嫌無愛想を作ることでそれを悟らせない。その辺はさすがとしか言いようが無いが・・・
「だって、俺が言った時、知らないって顔してたじゃん」
「あれは、ただ・・・」
「ただ、なに?」
--三蔵様たじたじですよ--
もう帰ろうかとした時に聞こえて来た二人の会話に、普段は見られない三蔵の困る姿があった。小坊主たちは意外な一面を見たなぁとこの先の成り行きを最後まで見たくなってしまった。勿論興味本位だ。
--今日は悟空さん優勢ですね--
--あ、でも・・・三蔵様、負けず嫌いですから--
--ってことは、ですよ?また・・・---
この先の様子が容易に想像できてしまった小坊主たちは、興味本位から、怖いもの見たさへと変わった。
何時も強硬手段にでて、悟空に反撃させないようにしてしまう事を思い出したらしい(笑)
「ねぇってば!ただ、なに?」
「うるせぇ!!いい加減だまりやがれっ」
「だって、今日は三蔵が悪いんじゃん!だから、ちゃんと聞かせてよ」
「・・・(怒)いい加減黙れ。黙らねぇと塞ぐぞ、そのよく動く口」
「え?・・・よくうご・・・・・・んっ・・・」
--アハハ・・・--
--さ、仕事に戻りましょうか--
--そうですね--
アハハと草木の間から見える光景にただただ呆れるばかり。
またも見たいようで観たくない光景に遭遇してしまった小坊主たちは、乾いた笑いをさせながら裏山を後にした。
こうして小坊主たちの三蔵と悟空に振り回される日々は続く・・・
--え・・・つづく?続くんですか?--
「ええ、どうやら続くらしいですよvv」
--そうですかぁ--
© 志桜 紫乃魅/FASCINATION
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