時には素直に



「やったぁ〜!!ね、観てた?三蔵っ!!」

TVからの歓声と同時に、それと同様、またはそれ以上の声で叫びながらくるりと振り向いた悟空は、大きな瞳を更に大きくさせて幸せそうに嬉しそうに、ソファに座っていた三蔵に飛びついたのだが・・・

スッパーン!!

間髪入れずに頭上に振り下ろされたハリセンの痛みに唸り、涙を溜めてキッと睨み上げる。

「さんっ・・・!!!って・・・何すんだよイキナリ!!」
「イキナリ飛びつくお前が悪い。ったく、毎回毎回飛びついてくんじゃねえ!!」

不機嫌極まりない三蔵は、普段の倍以上もの皺を眉間に寄せて、力任せに・・・実際は八つ当たりなのだが・・・ハリセンをフルスイングさせたのだった。
頭を撫でる悟空は、やはりと言うべきか、三蔵の胸中なんてものに気づくはずも無く、たった今終了したサッカーの試合の結果に一人盛り上がっていた。

「だって、勝ったんだよ!?ドイツ、行けるんだよ!!しかも三大会連続で!!これってスゲーじゃん!スゴイよ?ほんとスゴイ事ジャン!三蔵も一緒に喜ぼうよ♪な?」
試合のゴールシーンでも思い出したのか、既にハリセンで殴られた事など頭の片隅にも残っていない悟空は、三蔵の両腕を掴んでブンブン振り回す。
・・・此処で、何時もの三蔵ならば嫉妬のあまり腕を思いっきり振り払うところなのだろうが、こうも無邪気に喜びをあらわす悟空の満面の笑顔には勝てなかったのだった。

「たかが予選突破しただけだろーが」

呆れた風に言う三蔵。

「も〜!それがスゴイんじゃん!」
「へぇ」
「だって、三大会連続だよ?」
「ソリャスゲーナ」
「W杯だよ?しかも一番乗りで!!」
「ソリャーヨカッタナ」

歓喜溢れる悟空に対し、三蔵はセリフ棒読み状態。
いいのかこれで?と誰もが思うだろう会話に、悟空がキれた。

「もー!!三蔵のバカッ!!」
「っるせー!!大体な、てめーが悪いんだろーが」
「何で俺が悪いんだよ!サッカー観てただけじゃんか」
「・・・それが悪いって言ってんだ!」
「なんでだよっ!いいじゃんか、別に」

観たかったんだもん。そう言ってむぅっと頬を膨らませて拗ねる悟空。
本人はいたって真面目に怒っているのだが、三蔵にしてみれば悟空のそんな表情なんてものは、己の理性との戦いでしかない。

―――んな顔すんじゃねえ!―――

なんて思ってみたところで素直に言えるわけも無く、悟空の犯罪的に可愛い(三蔵視点)に、三蔵の中の何かが崩れた。

「お前の顔見んの、どれくらい振りだと思ってやがる!二週間だ、二週間!!それなのにてめぇはTVにかじりつきやがって!!」

後悔先に立たず―――今の三蔵にはぴったりの諺である。

一瞬の間を置いて気づいた自分の失態に、思いっきり悟空から顔を背ける。

「--------------」

どのくらい経過しただろうか・・・沈黙を破ったのは、悟空だった。

「・・・・・さんぞ、それって・・」

もしかして、と続くはずだった悟空のセリフは三蔵が遮った。

「黙れ、煩ぇ」

顔を背けられて言われても、大して怖くなくて・・・
更に悟空は爆弾を投下した。

「嫉妬、したの?」

背けられた顔を覗き込むようにして言えば、三蔵の眉間に皺が刻まれていた。

「・・・するわけねぇだろ、んなもん」

言い訳する時点で認めている事に気づかない三蔵に、悟空は抱きついた。
普段ならすぐさまそれを引き剥がす三蔵だけれど、今日に限ってそれは無くて、悟空は内心「可愛いかも」と思ってしまう。

「三蔵、大好き」

背中越しに抱きついたまま、思ったまま、感じたままを告白する悟空の思考には、既にサッカーの事など微塵も残ってなど居ない。そして、その代わりに悟空の中を占めているのは、目の前の不器用なまでの三蔵だけ。
普段は見られないだろう三蔵の照れた顔を見たいと、体を動かす悟空だったけれど、困難だと思われたその行動は、三蔵自身の腕によってあっさりと移動させられた。

「お前は俺だけ見てりゃいいんだよ」

聞こえるか聞こえないかの声音で言った言葉は、どこまでも甘くて、悟空は滅多に聞けない三蔵の言葉が嬉しくて、「サッカーばっかり観ててゴメンね」と胸中謝ってから「大好き」と声に出して伝える。するとすぐに塞がれた唇からは、普段よりも甘い空気が流れ込んで、体中に注ぎ込まれた。


By_紫乃魅


  紫乃魅様のサイトで、日本W杯一番乗り記念FreeNovelですvv
  TVにかじりつく悟空の背中を、嫉妬200%で睨む三蔵様が、劇的にツボです!!
  や、紫乃魅様のお話は、どれも私のツボを的確に突いてきますvv
  速攻で頂いてきました。
  紫乃魅様、いつも本当にありがとうございます!
  
  花淋拝