White×Gold


「ずいぶん賑やかですね悟空」
「八戒!」
 リビングの床に座り込む悟空の周りを、二匹の子犬がキャンキャンと飛び回っているのを、八戒と後ろから顔を出した悟浄が笑いながら眺めていた。
「えらく元気な二匹だなぁ」
「だろ」
 千切れそうなほど尻尾を振って、八戒や悟浄の足に飛びつく子犬たちを二人も抱き上げ、
「可愛いですね」
 その目じりを下げた。そして、
「名前は何て言うんですか?」
 と言う八戒の言葉に悟空は、それがな。と眉根を寄せた。



  「三蔵、なあ三蔵。名前なにがいいかな」
  「あ?んなモン適当につけりゃいいだろ」
  「ダメだよ、名前は大切なんだぞ!」
  「面倒くせぇな」
  「う〜ん…三蔵、いい名前ない?」
  「ポチとシロ」
  「ポチとシロぉ〜そんなん、いい加減じゃんかよ」
  「犬の名前なんて、そんなとこだろ」



「で、ポチとシロですか?」
「うん…」
「こいつなんか、まんまじゃねえか」
 悟浄は自分が抱えあげた真白の子犬を苦笑交じりに眺める。
「そうだよ。それにさ、三蔵、自分でポチとシロってつけたクセに、絶対名前呼ばないんだぜ」
 悟空の抗議の声に、そりゃ、あの三蔵はポチポチとは呼ばないよなぁ。と、心の中で二人して呟く。
「まあ確かに、ポチとシロじゃあねえ…二匹とも毛並みは凄く綺麗ですし…」
「だろ。なぁ八戒、なんか良い名前ない?」
「そうですねぇ」
 子犬の命名権を託され、八戒が思案気に宙を見つめ、
「こっちの金の毛並みの子は「琥珀」なんてどうですか?」
「琥珀…うん!いいなそれ。じゃ、こいつは?」
「う〜ん、毛並みが真っ白ですからねぇ」
 悟浄が抱いている真白の子犬を眺めながら、
「淡雪…でどうでしょう?」
 にっこりと笑った。
「おお、いいんじゃね。なあ淡雪」
 悟浄は抱き上げた子犬を自分の鼻先まで持ち上げる。
 と、淡雪は嬉しそうに悟浄の顔をぺろりとひと舐めした。
「はは、気に入ったみたい。ありがと八戒」
「いいえ、どういたしまして」
 笑う八戒に合わせるように、琥珀と淡雪は小さな尻尾を何度も振った。


 夜になって三蔵が帰宅すると、先を争うように二匹がその足元にまとわり付く。
「おかえり、三蔵」
「ああ」
 触れ合うだけのキスを交わして三蔵はソファへ、悟空は夕食の用意のためにキッチンへ向かう。腰を下ろした身体を革張りのクッションが受け止め、三蔵は大きく息を吐いた。と、金茶の子犬が丸い小さな黒目をじっと三蔵に向けて、短い尻尾をパタパタと振り続ける。
「何だ」
 返事が返らないと分かっていても、思わず言葉になって口をつく。
「頭を撫でてもらいたいんだよ。琥珀は三蔵が大好きなんだもんな」
 背後の悟空の声に、応とでも言うように子犬が一声。
「琥珀?」
「八戒がつけてくれたんだ。白いのは淡雪」
 ぴったりだろと上機嫌な声に、犬の名前なんぞ、どうでもいいじゃねえか。と音にはせずに。けれど、
「何だ…」
 未だ足元から見上げてくる黒曜石の瞳に、しかめ面をしながらも結局は根負けしたように三蔵の手が小さな金茶の頭をひと撫ですれば、満足げに鼻を鳴らした琥珀がその手をお礼とばかりにひと舐めした。

 そんな現在(いま)の自分と琥珀に、出会った頃の己と悟空の姿が重なって、三蔵はもう一度大きく息を吐いた。


copyright(C)Reincarnation_karing/2008


二人と二匹の生活。
琥珀は三蔵が大好きで、淡雪は悟空が大好き。
琥珀は拾われた時に、三蔵の顔を舐めて悟空に怒られたので、三蔵に頭を撫でてもらうのが日課になりました。
人語を解する、お利巧な二匹です(笑)
花淋拝


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