おまけ)


「さんぞ?」
 後ろでドアが開くと、悟空が小さくなって入ってきた。三蔵はちらりとその姿を見て、また視線を新聞に落とす。
 悟空は話し出すきっかけをつかめずに、もじもじとその場に立ち尽くしていた。新聞に隠れている三蔵の口角が、僅かに上がる。彼には悟空の一挙一動が、手に取るように伝わってきていた。このまま、声を掛けなければ、悟空はきっとこう言うのだ。
「さんぞ、まだ怒ってる?」
 その言葉に三蔵はやっと顔を上げ、新聞を無造作に放ると、指をくいと曲げ悟空を呼んだ。いつもは喜んで飛びついてくる悟空も、今回は神妙な顔つきでおずおずと傍へ来る。
「三蔵、ごめん…なさい」
 その、年齢よりもはるかに幼く見える仕草に、わざとらしくため息をついて、三蔵は静かに口を開いた。
「いくらバカなお前でも、あの時の事まで忘れたわけじゃねえだろ」
 その途端、びくりと悟空の肩が震えた。それはあっという間に全身に広がり、三蔵は舌打ちしてその身体を引き寄せた。
「まだ、こんな風になるんだ。俺の言うことは、素直に聞け」
 こくこくと何度も頷く悟空の背中を、幼子をあやすように何度も撫でてやる。
「ごめん、さんぞぉ…」
 縋ってくる子供を深く抱きこんで、三蔵は日向くさいその髪の毛に、口付けを落とす。
 遠い日の出来事が、これほど根深く悟空の中に残っている事が、腹立たしい。その中に、自分自身に対する怒りが含まれているのを、三蔵は自覚していた。
 知らず、悟空を抱く腕に力が入る。そんな彼を、金の瞳が見上げた。
「三蔵…くるし」
 我に返ったように、悟空を見つめ力を緩めてやると、ほっと息を吐いた。悟空は、にっこりと笑顔を見せる。その顔に三蔵も目を細めて、頭をくしゃりと一撫でした。
「飯を喰ったら、八戒にでも連れってもらえ。ただし、どこにも寄るなよ」
 驚いて声も出ない悟空に、何だと無愛想な顔を作る。
 悟空はぷるぷると顔を振って、三蔵はと聞き返した。
「俺はいかねえ、てめえらだけで行ってこい」
「じゃ、俺も行かない」
「おい」
「だって…三蔵も一緒じゃなきゃ、ヤだ…」
 真っ直ぐ三蔵を見つめたまま、悟空は続けた。
「俺は三蔵が一緒だから、楽しいんだ。いくらクリスマスだって、三蔵が居なかったら、ヤだ」
 聞き様によれば、最高の口説き文句であることに、この子供は気付いているのだろうか。
 三蔵は呆れた様に悟空を見下ろし、くっと喉の奥で引きつった様な笑いを零した。
「なんだよ、笑うな」
 悟空が頬を膨らます。それをふんと小馬鹿にしたように鼻で笑うと、ますます怒り出す。
「むー、三蔵のバ……んっ」
 抗議の言葉は最後まで続かず、触れたそこから甘い痺れが身体を包み込む。霞んでいく思考の中、ああ結局また三蔵に丸め込まれた。と思いながらも、まぁいいかと許してしまう。
 そうして、三蔵の手が服をまさぐり出した時、がばっと悟空が身体を離した。
「何だ」
 途端に、不機嫌な顔になる三蔵に、八戒たちが来た。と、告げる。ちっと舌打ちした三蔵から、悟空が離れようとした時、思い切り腕を引かれ再び口唇を奪われた。

 そして
 その長い口付けから、悟空が開放されたのは、ドアの向うに八戒たちが止まった時。




三蔵の言ってる「あの事」については、また改めて書きますわ。
今は、なんかあったんだな〜と、思っていてください。

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使用素材 : クリップアート【ひまわりの小部屋】様