君と火と…


—— ドォォ…ン!
「うわぁっっ!」
 突如、辺り一帯に轟いたその爆音に、後部座席の一人が驚いて立ち上がる、その途端車が大きく左に傾いだ。
「バカ猿!座れっ」
 その首根っこを引っ掴んで、ムリヤリに座席へと座らせる。
「ご、ごめん悟浄」
「大丈夫ですか?悟空」
「うん」
 その間にも、空には雷のようなそれと、幾色もの光彩の大輪が、競い合うように生まれていた。
「花火…」
「花火ですね」
「花火だな」
「…ふん」
 
 森を抜け、あと僅かで町に着くという時、前方に現れた大花火に、四人は車を停めて、空を見上げた。
「すげぇ…足にビンビンくる」
「こんな間近ってのは、初めてだな」
 まんざらでは無さそうな悟浄の呟きに、視線を動かす事無く同意の意を表した悟空は、無意識に隣に立つ最高僧の法衣の袖を掴んだ。
 それは常とは違って、振り払われる事は無く。呆れを含んだため息と共に、三蔵は悟空を見やった。
 普段から自分の倍以上はあるだろう蜂蜜色の瞳が、今は夜空の色彩をくるくるとその瞳に映していた。
 頭上の花園に夢中になっているその姿は、敵を前にした勇ましさの欠片も無く、幼さだけが現れている。
—— ったく、無防備にそんな面晒してんじゃねえよ
 自分の中に期せずして湧き上がった感情に、三蔵は内心で顔をしかめた。
 その感情に蓋をする様に、煙草を取り出そうとして腕を上げた途端、袖をつまんでいた悟空の手が外れる。
「あ…」
 同時に顔を見合わせた時、悟空の目が一瞬翳を落としたのが見えて。
「煙草を出すだけだ…」
 決して振り払った訳ではないが、結果として外されたその手に、三蔵は聞かれもしない言い訳をした。
「うん」
 音にされない意味を解して、悟空の手が再び三蔵のそれに伸びた。
 だが、それは目的のところへつく前に、別のものによって力強く握りこまれてしまう。
「さんぞう…」
 いつもは自分よりも冷たいその手が、今日はとても暖かく感じられて、悟空は夜空の大輪よりも華やいだ笑みを浮かべた。
 握られた手に安心したのか、ついと悟空の視線が再び夜空へ移った。
「綺麗だね…」
 返事は返らなかったが、僅かな間を置いて、
「…夏も、終わるな」
 三蔵がぽつりと漏らした。
「そうだね…」
 答えて悟空は、繋いだ手に少しだけ力を入れた。三蔵はその身体をくっと引き、耳元に口唇を寄せた。
 その時、一際大きな花火が夜空を明々と染め上げ、辺りに静寂が戻ってきた時、悟空の頬は薄紅に染まり、けれど幸せそうに頷いた。


「なぁ、俺らって何?」
「さぁ、何でしょうね…」
 完全に蚊帳の外にされた二人の仲間に、その後の悟空は三蔵が何を言ったのかしつこく聞かれたが、とうとう口を割る事は無かった。
「悟空っ!」
「もうっ、ナイショだってば!」


—— ここに居る…どこにも、いかねえよ




いえね、私は幸い?にして家から、花火を見る事が出来るもので…タイムロス無しで、光と音が体感できるのは、ラッキーだなぁと、思ってます(^^ゞ
 そして、これを書いたその日、我が家の近辺で行われる、最後の花火大会でございました。
 あいにくの天気だったのですが、色とりどりの火の華は、とても綺麗でした。
 でも、花火ってちょっと切ない気がします。私的にですけど…
 だから、最後に三蔵のあのセリフかなぁ…なんて(苦笑)