― Nature ―
雪の章

#02
「え? お前マジで持ってきたのか」
「うん」
 歳不相応な、けれど精神的には相応な満面の笑みで、悟空は持ってきたビンを誇らしげに悟浄へと見せた。
 雪が降ったら、試してみたかった事がある。 真っ白な雪の上に真っ赤なイチゴシロップをかける。 去年の夏から三蔵には内緒で密かに計画していた事。 悟浄を巻き込んだのは、ある意味予防策だ。 万が一、三蔵や八戒に見つかったとしても、悟浄がいればクッションになる。 悟空にだって、それくらいの知恵はついた。
「器とスプーン持ってきたから、早く行こうよ」
 渋る悟浄を急かして木立の中へ向かう。 どうせ食べるのだから、キレイな雪のほうがいい。


「どうだ?」
「うん……」
 真っ白な雪を器に山盛りにしてシロップをかけた。 喜々として一さじ口へ入れた悟空は、言葉もなく首を傾げた。
「おい、サル」
「悟浄……喰ってみろよ」
 目の前に差し出された器を取り一口。 そして悟浄もやはり奇妙な顔をした。
「だろ?」
「だな」
 簡単に言えば、美味しくないのだ。
「何だろうな。 かき氷とどう違うんだろう」
 見た目は夏のご馳走と変わらないのに、何かが違う。
「やっぱ、冬に喰うもんじゃねえってことじゃないか」
 悟浄の言葉に、悟空も頷く。 器の中身を空けると、真白の雪の上の赤いシロップは、あまり見たくないものを連想させた。 慌てて雪を上から被せると、悟空は小さく息を吐いて。
「帰ろっか」
「ああ」
 来た時の期待など欠片もなく悟浄の家へ戻る。
「おかえりなさい」 
 出迎えくれた八戒は、寒かったでしょう。とリビングでお茶の用意をしてくれた。 どこへ行ってきたのかと言う質問に、二人して曖昧に笑う。
 差し出された温かい紅茶と甘いケーキに、
「うめえ」 しみじみと悟空が言った。

 帰り際に、悟空が 「三蔵が言ってた、旬ってやつ、やっと分かった気がする」
 その言葉に八戒は首を傾げ、悟浄はもっともらしく頷いた。

本当のトコはどうなんだろう。 食べてみたい気もするけど……やっぱり、季節って大切かも(笑)
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