― Nature ―
雪の章

#01
 外から聞こえてくる声に、三蔵は筆を置くと椅子から立ち上がって、窓辺へと寄った。
 そこに見えたのは、降り積もった雪の中を駆け回る年齢上は大人な子供と犬2匹。
 庭に響く笑い声。 その瞳には一点の曇りも無く。 知らず、三蔵の口元にも微かな笑みが浮かんだ。


 雪が怖いと泣いた子供は―――
 一人が怖いと泣いた子供は、今、頬を真っ赤にして雪の中で笑っている。

 これからも、その笑顔が見られればいいと……願った。


「柄じゃねえな……」
 呟いてその場を離れようとした時、気付いた悟空が三蔵を呼んだ。 窓を開ければ吹き込む冷気が部屋の熱を奪っていく。
「三蔵、雪合戦しよう!」
 彼の提案に片眉を上げて一言。 「却下」
 悟空は、「あ、やっぱり」と、笑った。 期待など最初からしていなのだ。


 凍えた白に肩を震わせ、ヒザを抱えていた幼子は、もういない―――……


「よし琥珀、淡雪、もう一回競争だ」
 くるりと三蔵に背を向け走り出す一人と二匹。 その姿を見守る三蔵の横顔は、とても穏やかだ。
「物好きめ」
 苦笑いと一緒にこぼれた言葉は、白い息となって空気に融けて消えた。



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