― Nature ― 空の章 #02 「三蔵見て、空が燃えてる」 丸い指先のずっと向う。 雨上がりの夕焼けは、空を茜と黄金色に染め上げていた。 「雨が止んだばかりで湿気が多いからな」 三蔵の言葉に、悟空は大きな金眼を丸くして小首を傾げた。 それに苦く笑って三蔵は煙草を咥え、 「雨上がりの夕焼けは、こんな色になんだよ」 三秒で説明を終えた。 「ふ〜ん、そっか。 やっぱ、三蔵は何でも知ってんだな」 嬉しそうに笑う悟空につられ、わずかにその口角を上げた。 「すごいな、赤くてオレンジで金色で……本当に燃えてるみたいだ」 そのとき不意に、心へ直接聞こえたその声に、三蔵は小さな胡桃色の頭を見下ろした。 その声は、震えていた。 怖いと怯えていた。 行かないでと……泣いていた。 三蔵の知らない、遥かな記憶。 本人ですら憶えていない、遠い過去。 それが、自分から幼子を奪っていきそうで、知れず三蔵は奥歯を噛んだ。 「帰るぞ」 素っ気なくつぶやいて、夕焼けに背を向ける。 「あ、うん」 悟空は……夕空を振り返りながら、三蔵の後を追った。 「三蔵、手繋いでいい」 見上げてくる金眼が揺れているのを、きっと本人は気付いていない。 その顔から笑顔が消えている。 三蔵は腰を折ると、悟空を抱え上げた。 「さ、三蔵」 面食らった悟空は、勢いのまま三蔵の首に腕を回す。 「三蔵……」 驚きを隠さない悟空に、三蔵は菫色の瞳を細くした。 「たまにはな……」 笑みを含んだ三蔵の声音に、悟空の強張りが消えていく。 「……うん」 嬉しそうに笑って、その肩口に悟空は小さ額をこすり付けた。 三蔵、大好き……ありがとう 音にならない声は、けれど三蔵だけには伝わっていた。 燃えるような夕焼けに、漠然とした不安を感じるチビな悟空。 まだ、山を下りて間もない頃……の、設定で(笑) copyright(c)karing/Reincarnation
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