強 風 警 報



「なあ、三蔵…俺、そろそろ八戒んトコ行かないと…」
「……」
「三蔵ぉ〜」
 もう何回目だろう。朝飯喰ってから、ずっとこのカッコのまま。
 このカッコって言うのは、俺のベッドの上。俺の膝には三蔵の頭が乗ってて、目は瞑ってるけど寝てないのは知ってる。話しかけても返事もしてくれない。
「三蔵、今日は皆で釣りに行くって約束なんだよぉ」
「俺はそんな約束した覚えはねえ」
「もう…」


 旅が終わってからも色んな事があって、でも俺はずっと三蔵と一緒に居るって決めて。
 八戒は悟浄と小さな学校を建てて、俺はそんな二人の手伝いをしてる。ちゃんと給料も貰ってるんだ。
 通ってくる子供たちは、生意気だったり泣き虫だったり、ガキん頃のお前みたいだって三蔵は言うけど、でも毎日凄く楽しい。
 で、今日は皆で弁当持って釣りに行くって事になってるんだけど…
 三蔵の機嫌がちょっと悪いのは知ってたけど、理由までは分からなかったんだよね。その言葉を聞くまで。

「なあ三蔵。三蔵ってばぁ!」
「っせえな!」
「も、どけよ三蔵!みんな待ってるって言ってんだろ!」
 力任せに身体を持ち上げると、眉間の皺がいつもの倍になってる三蔵と目が合った。
「さ、三蔵…」
 思わず、声がひっくり返る。
「俺よりあいつらの方がいいなら、行っちまえ。もう、帰ってくるな」
 一瞬何を言われたか分からなかった。でも、きしっとベッドが鳴って寝室を出て行こうとした三蔵の背中を、慌てて追いかける。
「三蔵!」
 広い背中にぎゅうと抱きついて、額をこすり付けて。
「三蔵、なあ三蔵」
「何だ」
「俺がサボるんだから、三蔵だって仕事しないよな」
 俺の声は笑ってた。
 だってあの三蔵がだよ。信じられる?子供にヤキモチ焼いてるなんて。
「今日はずーっと一緒に居ような、三蔵」
 そう言った途端、三蔵は俺の手を解いて中庭へ続く窓へ向かう。
「三蔵?」
 首を傾げる俺に、振り向いて、
「いつまでもここに居て、坊主の煩せえ小言を聞きてえのか」
 それだけ言って外へ出てしまう。俺は焦ってその後姿を追った。
「待ってよ三蔵」
「大声出すな」
 二人で抜け出すなんて、すっごい久しぶりだから何かドキドキする。なんだ、寂しかったのは三蔵だけじゃなかったんだ。
 そう思ったらもっと三蔵にくっ付きたくなって、俺は彼の腕に抱きついた。
「歩きにくい」
「や、」
 そうしたら三蔵は立ち止まって、自然に顔を上げた俺にいきなりキスをした。
 ビックリしたけど、嬉しくなって俺はもっとと強請るように、三蔵の首に腕を絡ませた。


 その頃―――
「八戒先生、悟空兄ちゃんは?」
「う〜ん、今日はお休みみたいですねえ」
「ええーっ、約束したのにぃ」
「あいつ、休むなんて言ってたか?」
「いいえ、多分原因はもう一人の方でしょう」
「ああ?ああ、でっけー子供のほうね」
「ずっと、子供たちに取られちゃってましたからね」
「悟空も苦労するわな」

 八戒たちには迷惑掛けちゃったけど、三蔵が後から街一番のお菓子を子供たちに届けてくれたのを、俺は愁由からこっそり聞いた。


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2005/5/20 終了配布