閑話題あなざ



其の拾


 今の時期、野宿をするのは大した苦ではないが、ここ連日の暑さに誰もが辟易していた。

 それは微かに耳を震わせた水の弾ける音。何故かそれに意識がいって、悟浄は重い瞼を持ち上げた。
 辺りを見回しても別に変わった事は…あった。
「八戒?」
 そこに居るはずの仲間が一人足りないことに、悟浄はのろのろと起き上がった。
 思えばどうして探す気になったのか…悟浄は仲間の姿を求めて、そこを離れた。

 パシャ…ン――――

 また、水の弾ける音。
 それに引き寄せられるように、悟浄の足は大地を踏みしめ、昼間飲み水を確保した小さな池の傍まで辿り着いた。
「んだよ八戒の奴、水浴びな…ん、か」
 最後まで言葉は続かなかった。月光の儚い光彩の中で、白く浮き上がる肢体、白磁の肌を滑る雫が宝石のように輝いて、悟浄は息を呑んだ。
「…悟浄?」
 人の気配に気付いた八戒が振り向き、その名を呼んでも惚けたように悟浄は立ち尽くしていた。
「悟浄?どうしたんですか」
 パシャンと八戒が水から上がった。悟浄のそれは無意識。
「ご、悟浄」
 抱きしめられて戸惑った声を上げる八戒に、漸く悟浄の視点が合っていく。
「無用心だぜ、こんなトコで」
 いつものおどけた口調に、八戒もその口角を緩める。
「僕を襲う物好きなんていませんよ…貴方以外に」
 冷たいはずの八戒の身体からじわりと熱が伝わる。
「結構、趣味は良いと思うけどな。俺」
「このままだと、貴方まで濡れますよ」
 言った八戒だったが、悟浄の腕の中に大人しく納まったまま。
「今更だろ…どうせなら」
 悟浄の腕がその肢体を引き寄せる。吐息が絡み合うほど近付いて、触れ合う瞬間。
「ナカまで濡れようぜ…」
 熱い囁きが八戒の冷えた身体を駆け抜けた。


おおっ、つ遂に花淋初の浄八♪






其の拾一


三蔵 : てめえ、いい加減にしろよ
悟空 : だって、まだ足らねぇんだモン
     大丈夫、喰った分はちゃんとがんばるから
三蔵 : 喰った分…はだな
悟空 : おうっ!
三蔵 : 忘れるなよ

八戒 : 悟浄、今夜は飲みに行きましょうね
悟浄 : 喜んで


悟空 : さん、ぞ…も、やだぁ
三蔵 : 喰った分はがんばる、と言ったのはお前だぞ
悟空 : だか、ら……ぁああ…んあ…や
三蔵 : ほら
悟空 : やあぁ〜ぅん…ああ、さん…ぞぉ
三蔵 : どうした、自分で動かないとイケねえぞ
悟空 : ふぁ…ぁぁん…も、ゆるし
三蔵 : がんばるんだろ
悟空 : む、り…ごめ……さんぞ…おね、がい…い
三蔵 : しょうがねえな
悟空 : んんっ!あ、あ…ア、ああぁっ

三蔵 : まだだぞ、悟空
悟空 : や、ぁだ…ムリ、だ…よぉ
三蔵 : がんばれよ

悟空 : う、ああぁん…オニぃ…
三蔵 : (怒)仕置きだな


墓穴堀まくりの小猿






其の拾二


「今日はコレ」
 三蔵の目の前には丼。
「ウナギか」
「そ、 夏バテ予防にね」
 そう言って手を合わせる悟空を見ながら、 彼は一人、 忍び笑いを漏らした。


「さ、んぞ……も、ダメ」
 寝台の上組み敷いた身体が震える。
「夕飯に精力のつくモン喰っただろ」
「そ、それは……このた、めじゃ――……っああ」
 ゆすり上げられて、意味のある言葉を止められる。 三蔵の思う様に追い上げられ、 堕とされ啼かされた。
 大きな波が引いて、 涙をこぼして息を乱す悟空の目元に、 さっきとは打って変わった優しい口付け。
「明日の朝は、 ゆっくり寝てろ」
 甘い囁きに、 悟空がぷうっと頬を膨らませた。
「ん、 こんな時ばっかり三蔵優しい」
 拗ねた口調に彼の口元が上がる。
「そんなトコに惚れてんだろ」
 勝ち誇ったようなその一言に、 悟空の顔が真っ赤に染まった。
「ううっ……もう!」
 そうして三蔵を引き寄せ、 耳朶に歯を立てる。
「何の真似だ」
 変わらない三蔵の冷静な声に、 ますます悟空の負けん気が顔を出す。
「悔しいから、 今夜は寝かせてやんない」
 濡れた言葉耳元へ落として、 彼の身体へ足を絡ませた。 一瞬、 虚を突かれた三蔵が、 けれど片眉を上げる。
「いい覚悟だ」
 低く呟いて、 再び悟空へ覆いかぶさっていった。




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