酔 月 熱を孕んだ空気がゆっくりと落ち着きを取り戻す。 肩口からは安らかな寝息。開けば夜空の月よりも尚眩い金瞳を瞼の奥に隠して、見せる寝顔は先ほどまでの淫蕩の欠片もない。己に全てを預けて深い眠りに沈む愛し子。 「ガキ丸出し…」 呟いてから苦く笑った。 旅に出る前から、そのガキに自分は何処までも溺れている。それが、身体を重ねるようになってから、更に拍車がかかったという自覚も充分すぎるほど有った。 西へ近付くごとに増していく生命の危機に、身体を休める事は最大級の課題ではあるけれど、互いを求める熱情を抑える事などできる筈もなく、この頃では三蔵の激しい求めに最後は悟空が意識を手放すといった事が少なくない。 シーツに包んだ悟空を抱き上げ浴室へ向かい熱めのシャワーで室内を暖めてから、温度を下げて汗と体液を流し落とすと、今度は片手で器用に悟空の身体を支えて、二本の指をゆっくりと双丘の間へ滑らせた。 情事の名残で解れた秘奥へ挿し入れた指を折曲げて、ゆっくりと抜いていけばとろりと溢れてくる己の欲望の証。 再び指を埋め込んでかき出す。 三蔵が悟空をここまで追い込む理由の一つに、この後処理があった。 以前本人にやらせた事があったのだが、あまりの恥ずかしさに行為は進まず、三蔵がしようとすればどこにその力が余っていたのかと思うほど全力で抗うのだ。 結果。三蔵は意識が飛ぶまで悟空を攻め立ててから、自ら後処理を買って出ていると言う訳だ。ただ悟空にとっては迷惑な話ではあるけれど… ゆっくりと、普段からは想像もつかないような優しい手つきで、三蔵は悟空の身体を清めていく。それはけして嫌な作業ではなかった。 真白で純粋な魂を欲望と快楽で汚し、自身でまたその穢れを拭い清める。 身体中に散りばめた所有の花弁に満足の笑みを浮かべながら、三蔵が埋め込んだ指を折り曲げた途端、悟空の肩が大きく揺れ、次いで震えながら静かに瞼が開いた。 暫く見つめ合って、先に言葉を発したのは悟空。 「…さん――ぞ…?」 「起きたのか」 「ん…なに、して―――っ」 そして悟空の身体が強張る。 「ぅあ…」 「バカ猿、力抜け」 自分の置かれている状態に身体が反応し、思わず三蔵の指を締め上げれば、それが却って悟空の全身に刺激を与える。 「や…さん、ぞ―――ゆび…」 「だから、力抜け」 無理やり引き抜くことは簡単だがそれは悟空を傷つける事になるため、三蔵の指はいまだ悟空の体内にあった。 「だ…って」 小刻みに身体を震わせながら、力の入らない指で三蔵の腕を握る。 「このまんまじゃ抜けねえんだよ」 片腕を封じられた状態で、三蔵はゆっくりと悟空の身体を楽な姿勢へと持っていく。が、 「ふぁ……ぁ」 三蔵を跨ぐ形でもたれた途端、互いの中心が触れ合う。悟空は思わず吐息を漏らした。 「ちっ…」 目の前の媚態に燻っていた熱が蘇る。底なしの欲望に自分自身が呆れるくらいだ。 「落ち着け、悟空」 髪を梳き背中を撫でて、そっと名前を呼んでやる。 「ん…」 両腕を首に回し肩口に顔を押し付けて、悟空はゆっくりと深呼吸を繰り返した。 「もう少し、我慢しろ」 幼子をあやすようにリズムを刻む手はそのままに、秘奥へ埋めた指をそろそろと抜き出す。 「あ、あっ…んん」 身体の内側を何かが流れていく。その感触に下肢が震えだす。 「さ…さん、ぞぉ」 「もう少しだ」 硬く閉じた眦から涙が零れ、高まっていく熱をどうしようも出来なくて、悟空がひくりと喉を鳴らした。 「大丈夫だ、悟空」 「さんぞぉ…んっ!」 三蔵の指が抜け出た瞬間、悟空の身体からも力が抜けた。 「大丈夫か」 汗で湿った濃茶の髪に幾つも口付けを送りながら、なだめる様に背をたたき、髪の間からのぞく真っ赤になった耳に、愛しさの笑みが零れた。 出しっぱなしのシャワーを当てると、悟空は一度身体を強張らせ持ち上げたその顔に、三蔵の手が止まった。 「三蔵…」 潤んだ金瞳が孕んだ熱は、ベッドで交わすのと同じ色。 「俺…お、れ」 浮かんだ涙は紛れもなく懇願の証。 「ごめ…ごめ、ん―――三蔵」 細く細く銀糸を紡ぎながら、震える悟空の言葉に、 「お前の所為じゃねえよ」 涙を吸い取って悟空の手を取った。 「三蔵?」 「ちゃんと握ってろよ」 そして互いの花芯一緒に握らせると、焦ったように悟空の声が上ずった。 「三蔵!」 「もう、入れらんねえだろ」 「で、でも…」 昂ってしまった身体は開放を求めて意思とは関係無しにその熱を上げていく。 「いいから」 「うあ…あ、あ…んぅ」 腰を抱き寄せ自分もまた花芯に手を添え、ゆっくりと扱き出す。 「あぁ、ア…さん、ぞ…んぁ」 身体を支配しはじめた快感に、悟空の身体が揺れる。上気した頬と口唇の奥からのぞく舌に、誘われるように三蔵が口付ける。 止まらない手淫は互いの蜜でぬめりを増し、淫らな音を浴室に響かせた。 「ふぁ…さんぞ、さんぞぉ…や、止ま…ない、よぉ…」 「いいから…そのままイっちまえ」 追い立てるように扱くスピードを速め、腰を抱いていた手を下へ降ろして秘奥を刺激した。 「っ、んぁ…ああっ…ああああぁぁ!」 「く…」 手の中で弾けた蜜。 悟空の嬌声を心地よく聞きながら、浅い呼吸を繰り返すその身を抱き寄せ、三蔵が極みの涙を吸い取る。少し前の激しさが嘘のように、落ち着かせるために背中をさする手つきは優しい。それに安心したのか、悟空がゆっくりと三蔵を見上げた。幼い仕草に三蔵は目を細めながら、 「落ち着いたか」 静かに問えば、 「ん…へ、いき」 はにかんだように悟空が笑みをこぼす。その眦へ軽く口付けを落とすと、今度こそ三蔵は情事の名残を清めるために、シャワーを手に取った。 「三蔵…」 同じベッドの上、三蔵の腕を枕にした悟空が躊躇いがちに口を開いた。 「ごめんな、俺…いっつも、三蔵に…後始末」 それを最後まで言わせずに、三蔵はついと悟空を頭を抱き寄せた。 「三蔵?」 「俺は、嫌な事まで引き受けるほど、お人好しじゃない」 その言葉に、悟空の肩が揺れる。 「寝ろ、明日も早いぞ」 「…うん、ありがと三蔵…おやすみ」 「ああ」 眠りを誘う口付け。 悟空はゆっくりと、眠りの淵を降りていった。 copyright(C)Reincarnation_karing
久しぶりの更新。 甘えっぷりも、甘やかしっぷりも…ねえ |