このまま、溶け合ってしまえればいいのに―――――
Endless Love
仄暗い室内に響く荒い息遣いが途切れた刹那、
「あ――あぁぁっ…」
嬌声と共に肺の空気を全て吐き出して身を震わせる。身体の内部に広がる熱い飛沫の感覚が、下肢の力を奪っていく。
「大丈夫か」
「はい……ん」
労わる言葉に次いでゆっくりと離れていく身体、内股を流れる欲望の証を感じながら、八戒の身体がベッドへ沈んだ。
呼吸を整えながらふと視線を感じてそちらを見れば、数瞬前まで自分を翻弄していた緋色の瞳が、今はその片鱗すら見せずにじっと八戒を見つめていた。
「悟浄?」
「よかった?」
唐突な質問に間があって、それから八戒の頬が染まっていく。
「そんな事、聞かないでください」
困ったように目の前の男を見つめると、
「だって、分かんねえもん。いつもお前の背中しか見えねえから…お前、俺に感じてる?」
返答に困る質問に八戒が押し黙っていると、不意に強い力で身体を引かれた。
大差ない身長差の、けれど自分よりずっと逞しい体躯に組み敷かれて、八戒は緋色の瞳を見上げていた。
「お前、俺に抱かれて嬉しい?」
「何を…」
紅い双眸は逃げる事を許さないように、八戒の心を射抜く。
強い意志を秘めたその瞳は美しい宝石を思わせ、八戒は耐え切れず瞼を閉じた。
「貴方は…狡い」
聞かなくても、言わなくても解っているはずなのに、自分を組み敷く男はそれでも言葉を求めてくる。
「…そうかもな―――でも、俺はお前の口から聞きたい」
そして額に暖かい感触。
八戒は驚いて目を開けた。
「あ……」
自分を見下ろす瞳は、変わらぬ優しさと熱情と、そして微かな寂しさを湛えていた。
「悟浄…」
「うん」
急かす事も促す事も無く、彼は待っていた。それから、
「僕は…―――貴方に溺れる事が…恐いんです」
抱きしめてくれる腕の温もりを知ってしまったら、与えてくれる幸せを受け入れてしまったら。
「姉さんを忘れちまいそうだから」
「ご、じょ…」
心を読まれたようでその背筋を寒くする。けれど、
「忘れる必要なんかねえよ」
大きな手が頬を撫でる。
「心底愛した女を、そう簡単に忘れるなんて出来ねえしよ。ま、俺は俺で、お前の姉さんが知らないお前の顔をたくさん見てきたしな。それに―――」
気が付けば、八戒は広い胸に抱きしめられていた。
「今お前を暖めてやれるのは、俺だけなんだぜ」
悟浄の言葉に、八戒の頬を自然と涙が伝った。
「忘れなくていい。お前のそういうトコ全部ひっくるめて、俺は…お前に惚れてんだからよ」
抱きしめられたままなので彼の顔を伺う術が無いけれど、それでも八戒には悟浄が笑っているのが見えていた。そういう人なのだ。と、自分が一番よく知っている。出逢った頃から、笑うことが下手な自分の代わりにいつも笑ってくれた、優しい人。
ゆっくりと逞しい背中に腕を回した。
「悟浄…―――キス…して、ください」
返事の代わりに、チュッと額に濡れた音。そのまま鼻筋を通って口唇に触れたそれが、啄ばむように幾度も幾度も繰り返される。
互いに上がっていく熱を感じながら、紅と翠の瞳が絡み合った。
「あ…ん―――ご…じょ、んんっ」
口付けから開放された口唇は閉じる事を忘れ、与えられる刺激を素直に言葉へと変えていく。
顎を辿り首筋を滑ってぽちりと勃ち上がる朱い頂を吸い上げられ、
「ああぁぁっ!」
背を反らせば、それはまるでもっとと強請っているように、悟浄の前に差し出された。
片方を口唇で、片方を指で嬲ると、上がる声は一層の艶を振りまく。
反則だ。
思わずにはいられなかった。自分の愛撫に感じ入る八戒の、全身から滲み出る色香に、我を失いそうになる。肉食獣が獲物を貪るような、そんな凶暴な気持ちが湧き上がって。悟浄は知れず喉を鳴らした。
「ご、じょう」
普段からは想像も出来ないほどの甘い声と、熱に潤んだ翡翠の瞳で見つめられ、悟浄は苦く笑った。
「そんな声出すなよ」
言われた言葉の意味が分からず、八戒は首を傾げる。
「抑え…効かなくなっちまう」
「抑え…って」
見つめ合ったまま、二人して顔を赤くした。が、
「悟浄…」
「八戒」
誘ったのは、誘われたのはどちらだっただろう。
「あ…ふ、ん―――ぅん…あ」
深く浅く口唇を重ねあい、舌を絡め濡れた音を響かせる。逞しい腕が背中を抱き寄せると、八戒は自ら下肢を擦りつけた。
「八戒…?」
「もっと、貴方を感じたい―――もっと…深く」
甘美な誘いに、思わず生唾を飲み込んだ。
「だから、それ反則だって」
「はん、そくって…っあ、あぁ」
聞き返そうとした声が、あえかな音色に変わる。
節ばった指が双丘をたどり、欲の証に濡れる秘奥へゆっくりと埋め込まれると、熱い内壁が緩やかに震えだす。
指を増やして中を刺激すると、淫らな水音と共にその指を締め上げ、前で育ち上がった花芯は歓喜の蜜を零した。
「あぁぁん…ごじょ―――ごじょぉ…はぁ、ん…あ…ふぅ」
押し寄せる快感の波に、頭をふって耐える。声は、抑える術を無くしていた。
「ごじょ、も…ダメで、す…―――ゆび…抜い、て……ああぁっ」
「なんで?抜いていいのかよ」
微かに笑いを含んだ声で問い、沈めた指を中で折り曲げて壁を擦りあげる。
「あ、ああぁぁぁん!」
喉を反らせて、とぷりと八戒が蜜を吐き出した。けれど本格的な絶頂には遠く、それが却って八戒の欲を刺激した。
「悟浄…」
その翡翠の瞳に絡め捕られた。
「欲し、いです…貴方が―――来、て…僕の……な、か」
「八戒…」
指を引き抜いて、細腰を抱えた。
猛り立つ雄を秘奥に宛がいゆっくりと腰を進め、あと僅かという所で突き上げた。
「ひ、あああっっ」
その途端、食いちぎられそうな締め付けに、意識ごと持っていかれそうになるのを、息を詰めて堪えた。
「すげえ…お前、ん中」
「また、そ…ゆ事」
直接すぎる悟浄の言葉に、頬を染める朱を濃くして、けれど八戒はたおやかに微笑む。
「すっげ、綺麗―――お前」
汗の光る額に濡れた口付けを送って、悟浄は緩やかな律動を開始した。
「ん…―――んあ、ぁぁぁ…」
己が上げる声、ベッドの軋む音、淫らな水音。
そのどれもが、二人の淫火を激しく燃え立たせる。
「っ…はっ、かい」
「ごじょぉ―――ぅあ、…いい、そこ……いい、ごじょ」
「俺も…最高―――八戒」
突き上げ、奥を擦り、良い箇所を攻め立てると、合わせるように腰が揺らめきだす。
互いに相手に溺れ、交じり合う身体が共に極みを目指す。
「悟浄…んく、…―――ふ…ぁ」
「イき、そ?」
「は、い……んぁ!」
「俺も…一緒に―――イこう、ぜ」
答える代わりに八戒の腕が広い背をかき抱いた。
抽挿のスピードが上がり、突き上げが大きくなると、八戒が頭を振って快感に耐える。
喘ぐ口唇を乱暴に塞ぎ、舌を絡め吸い上げる。そのまま悟浄は突き入れた己自身をギリギリまで引き抜き、極みへの最後の一段を駆け上がった。
目の前の極彩色のスパーク。
上がるはずの悲鳴とも嬌声ともつかぬ声は、口唇に塞がれたまま。悟浄は八戒の全てを手に入れ、そして己の全てを愛しい者の中へ注ぎ込んだ。
荒い息と共に、逞しい腕が八戒を抱きしめる。
そのまま暫く、動く事も言葉も交わす事も無く、重なり合う心音を聞いていた。
やがて――――
「悟浄…」
喘ぎすぎて掠れてしまった声に呼ばれ、悟浄は僅かに身体をずらして、上体を持ち上げた。
「どした?」
悟浄を見上げる翡翠の瞳は、未だ情欲に潤んでいた。
「さっきの…答え」
「答え?」
傾げた首に腕が廻って、また引き寄せられた。
「凄く…よかった、です」
耳元に囁かれた声に、ぞくりと背筋が痺れた。
「!!―――あん…ご、じょ」
繋がったままの下肢を揺すられ、八戒の背がしなる。
「だから…煽るな、って」
「んぅ…そ、イミ…じゃ―――あ…あぁ」
「無理…止まんね」
自分の中で質量を増す欲棒に、抗えるわけも無く。八戒は両手で、悟浄の頬を包み込んだ。
「八戒?」
「よく、してください…ね」
恋人たちの熱夜は、夜明けを忘れたかのように、続いていた。
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サイト初の浄八ss。
三蔵悟空よりも、オトナの恋愛を目指してちょっと濃ゆくしてみました。
しかし、企画の一本が裏ってどうよ。
や、企画だからナンでもアリって事でぇ。。。
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