59) 終日 

「おい…息しろ」
「…うっ―――は、ふー」

 パタパタパタ…―――

「あ…」
 静まり返った部屋。窓の向こうでカラスが一声鳴いた。
「お前な…」
「ごめん…」
 ローテーブルを挟んで向かい合う二人の前に、トランプの山。
 きっかけは何だったっけ。
 三蔵が一生懸命やり繰りして勝ち取った、三日間の休日。ドライブしたり、一緒に食事を作ったり、とにかく離れていた間を埋めるように、ずっとずっと一緒に居た。
 それでもって今、何気なく始めたカードのピラミッド作り。
 俺は意外な発見をする事になった。
「集中しろとは言ったが、息を止めろとは言って無え」
 三蔵はまたカードを手に取った。
 本当に驚きだ。三蔵がこんな事に夢中になってる。カードを睨んで真剣にバランスを取ってる、紫暗の瞳がちょっと寄り目がちになって、どうしよ何か可愛い…かも。
「何だ」
「え?」
 カードから視線を外して俺を見ている、ちょっと…どころかかなり不審な眼。慌てて立ち上がった。
「えと、コーヒー淹れて来る」
 逃げるようにキッチンに駆け込んで、でもやっぱり緩む顔を抑えられない。
「三蔵のあんな顔、初めて見たかも」
 カップを用意しながら、ちらりとリビングを伺うと、カードを睨んでる三蔵が見えて…
「なんか、すっごい幸せ」
 こんな風に大好きで大切な人と、時間がゆっくり流れる時を過せる。
 三蔵が居てくれるだけでいい、他には何にも要らない。
 目の前で香るコーヒーをカップに入れて、俺は足音を忍ばせて三蔵の隣へ寄った。

「他にしてえ事はないのか」
 広い肩に頭を凭れている俺は、耳元で響くテノールに小さく笑った。
「ん、三蔵とこうして居られるから」
 三蔵は何も言わなかった。黙ってコーヒーを口に運んで、どれくらい経った頃だろ、
「悟空」
 呼ばれて顔を上げた俺、返事が出来なかったのは、温かいそれに塞がれてしまったから。
 ラグの上に横たえられて、上がっていく体温を感じながら、三蔵の背に腕を回す。
 ずっと、ずーっと一緒に居たいけど、三蔵を困らせるような我が侭は言えないから、
「三蔵を、俺にいっぱい―――ちょうだい」
 忙しくて離れていなければならない時も、我慢出来きるくらいたくさん、三蔵を俺にちょうだい。
 三蔵は真上から俺を見つめて、その紫暗の瞳がすっと細くなった。
「やるよ―――お前の、好きなだけな」

 そうしてまた、ひとつキスをくれた。


おわっとけ


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秋の連休、皆様はどうでしたか?
私はぼーっと、終わりました(げふげふ)
花淋拝

   


使用素材 : 【tricot】