57) 前日 

「お疲れ様でした」
 投げ出された書類の束を取った、深い緑の視線の先。疲労の濃い身体を沈めるように、椅子に凭れかかった人物は、懐から取り出した携帯電話を放り投げた。
「俺は完休だ」
 低い声で唸るように告げ、椅子から立ち上がる。
「邪魔はしませんよ。ゆっくり休んでください―――悟空に、よろしく」
 最上階の部屋を出て行く背中に、小春日和な笑顔を向けた。
 僅か三日間の休みを取るために、彼がどれほど少年に寂しい思いをさせたのか。
「健気なのは、悟空だけじゃなかったんですねえ」
 主の居なくなった部屋で一人呟き、抱えた書類を捲りながらその場を立ち去ろうとして、
「八戒!三蔵はどうした」
 血相を変えて飛び込んできた同僚に、苦く笑った。
「タッチの差でしたね悟浄。社長は帰社しましたよ、三日間は連絡不能です」
 内容の重大さなど微塵も感じさせない口調に、悟浄は肩を落とし、けれどにやりと口の端を上げた。
「しゃーねぇわな。んじゃ、ま、俺たちでなんとかするか」
「トラブルですか?」
「おう!手強いぜ」
 どこか楽しんでいるその口ぶりに、一つ嘆息して、
「片付いたら、入れ替わりに休暇を要求してみますか?」
 並んで歩き出す。
「ムリムリ、当たってそのまま、砕けちまうぜ」
 見も蓋もない返答に、そうですよね。と、笑った。
「これ以上悟空の悲しむ顔は、僕たちも見たくないですから」
「やるっきゃねえっしょ」
 互いに頷き合って、戦場へ目を向ける。
「休暇は無理でも、臨時ボーナスくらいは期待してえな」
 のんびりとしたそれに、八戒もくすりと笑って相槌を打った。
「同感です」


おわっとけ


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閑話初のパラレル。
巨大企業の若社長とその右腕左腕。
どうやら続くらしい…これも初だ。。。
花淋拝

 


使用素材 : photo【tricot】