57)  理由

 ――――この頃、三蔵の後ろじゃないんですね

 辿り着いた町で、いつものように八戒と買出しに出ていた時、そんな事を言われた。
 気分転換かな。
 そう言ってみたけど、本当はちゃんと理由がある。

 旅を続けてると、落とし穴のように暇で、敵も襲ってこない日がある。
 ぼーっと、後ろで座ってるとその内眠くなって、何処でも寝られるってホント便利。こういう時はチビは有利だよな。悟浄に揶揄われんのは、ムカつくけど。
 で、ある時。俺は昼寝を満喫して、気持ちの良い目覚め―――のはずが…
「さんぞ…」
 目の前の席に座ってるはずの三蔵が見えなくて、それどころか俺一人だけがジープに居るだけ。
「さ、三蔵っ!」
 パニックを起こしかけて、
「悟空、どうしたんですか?」
「は、八戒…三蔵、三蔵は」
「っせーな」
 慌てた俺の傍へ来てくれた八戒の後ろ、大きな木の下で新聞を持ったままの三蔵が、呆れたようにこっちを見ていた。
「すいません、休憩で止まったんですけど、悟空が気持ちよさそうに寝ていたので」
 俺はまだ早打ちをしている心臓を、服の上からギュッと握って、車を飛び降りると三蔵の傍へ駆け寄った。
 そんな俺に、三蔵は何も言わずにまた新聞に注意を向けた。
 
 目が覚めた時、誰も居なくて。
 落ち着いてみれば皆、直ぐ近くに居るのに。最初に目に入ったのが空で、俺の中を一瞬にして暗闇の記憶が駆け巡ったんだ。

 三蔵の傍でヒザを抱えてじっとしてると、
「ここにいるだろ」
 本当に小さい。隣の俺だけに聞こえる声で、三蔵が呟いた。
「あ……」
 不思議。胸の中でモヤモヤしてたものが消えた。
 三蔵は、解ってくれてたんだね。

 それから俺は、三蔵の後ろじゃなくて八戒の後ろに座るようになった。
 理由?
 目が覚めると一番最初に、三蔵の横顔が見られるからだよ。

 でもコレ、三蔵にはナイショな。



おわっとけ


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悟空の座る位置が八戒の後ろなのを、強引な理由をつけて書いてみました(爆)
花淋拝

   


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