50) 成長 

 相も変わらず、猿と河童がくだらない事で、言い合っている。
 どうやら、猿の背が小さいことを、からかっているらしい。

「何だよ、俺だっていつまでも小っせぇまんまのわけねーだろ」
「ムリムリ、俺がお前の歳ん時は、もう三蔵よりデカかった」
 俗に言う、『ウドの大木』ってやつだな。
 そんな事を思っていると、新聞の隙間から八戒が苦笑しているのが見えた。

「そんな事ねえ、俺はこれから絶対にデカくなる!三蔵より」
 その聞き捨てならない言葉に、俺は静かに新聞を下ろした。
「おー、いいのかそんな事言って、三蔵様よりデカくなったら、甘えられねぇしもしかしたら、嫌われるかもしれねーぞ」
 途端に猿の顔色が変わった。
 言葉に詰まる悟空を見ながら、俺は僅かに口元を上げる。
『河童もたまには良い事を言うじゃねぇか』
 さて何て答えるか。
 煙草を咥えて悟空を観察していると、くるりと向きを変えて猿が近づき、あろう事か
「さんぞ、俺がデカくなったら…嫌いになっちゃう?」
 とんでもない事を言い出しやがった。

 沈黙が部屋を支配する。
 ニヤけ面の河童。
 八戒は脇で小さく肩を震わせている。
 目の前の悟空はというと、不安をいっぱいに孕んだ金瞳で、俺を見ていた。
 何をどう答えたところで、揶揄いのネタになるのは明白。
『クソ河童、マジにぶっ殺す』
 その誓いを胸に、俺はこの場から逃げ出す算段を始めた。




おわっとけ


copyright(c)karing/Reincarnation_2006



ずーっと前に、ちょっとだけtopに置いておいた小話…拾ってみました。
区切りの50話目なのに、使いまわしかよ
花淋拝

   


使用素材 : photo【tricot】