49) 最初 

 最初は二つ。
 次が三つ。
 それから、六つ。


 それは悟空の秘密の場所。
 三蔵に拾われて、この寺院へ来た頃、僧徒の侮蔑の視線を避けるように、三蔵の迷惑にならないように、時間を潰すために歩いた裏山で見つけた場所。
 一人になるのは寂しいけれど、一人ぼっちじゃない。
 今は、三蔵が居るから――――

「じゃ、二つだけ貰ってくな。ありがと」
 大切に二つの実を両手に収め、悟空は大樹を見上げた。風がざわんと葉を揺らす。駆け出して、目指すのは大切な人。

「さんぞ…あの、コレ」
 目の前に差し出された、ふくよかな橙色の実。
「枇杷か、どうした」
「裏山で見つけた。あ、でも貰ったのは二つだよ」
「そうか」
 少年は知っている。
 自然から必要以上のものを奪う事が、その自然を傷つけることだという事を。
「洗ってこい」
「うん」
 二人で一つずつ。
 それが、二人の決まりごと。


「ごめんな、今年は三つ貰うね」
 悟空の謝罪に、けれど大樹は穏やかに、葉を揺らしただけ。
「はい、三蔵」
 まるまる実った枇杷の実。
「これは愁由の」
「ありがとうございます、悟空」
 今年は愁由と三人で。でも、やっぱり一個ずつ。


「今年は六個なんだ、ごめん」
 両手に抱えた橙色の実。
 やはり大樹は、風に葉を躍らせたまま。
「これが三蔵。で、八戒と悟浄、ジープのもあるからな」
「ありがとうございます、悟空」
「ありがとさん」
「きゅ〜う」
「三蔵、愁由んトコ行ってくるな」
 執務室を飛び出していく養い子を黙って見つめ、それから机上に二つ並んだ枇杷の実の一つを手に取った。


「毎年、悟空だけの秘密の場所から、人数分だけ貰って来るそうですよ」
 ジープに揺られた帰り道、傍仕えから聞いた話。
「で、今年は俺らも、おこぼれに与かったってワケね」
 ぷかりと吐いた紫煙が後ろへ流れていく。
「まず、最初に三蔵に渡すんですって」
 八戒の肩が揺れた。
「三蔵様命だからなぁ、小猿ちゃんは―――で、お前気付いた?」
「何がですか?」
「三蔵の奴、猿が出てった後、自分に渡された実じゃない方、喰ってただろ」
「そういえば…」
 当たり前のように差し出された大きな実。「そこへ置いとけ」の一言の後、悟空が部屋を出てから三蔵が取り上げたのは、小さな実。
 それが、当たり前のように。
「さりげなく、見せ付けるんですよねえ」
「ほっとけよ、あんなバカップル」


 夕焼けの橙色に染まる裏山に、悟空だけが知っている秘密の場所。
 毎年、少しだけ分けてもらう自然の恵み。

 大樹は今年も、葉を揺らし、ふくよかな実をたわわにつけて、大地の子を待っていた。



おわっとけ


copyright(c)karing/Reincarnation_2006



さて、悟空くん、毎年一番おっきな実を三蔵に渡すのに、いつの間にか自分の小さい実とすり替わっているのに、気付いてません。
や、それが悟空くんです///
ちなみに、我が家の枇杷の木、今年も大豊作でしたvv
花淋拝

   


photo【karing】