46) 膝枕 

 いつもは喧しい、養い子の声。
 今日に限って心地良いのは、きっとこの陽気の所為だ。
 そうだ、そうに決まってる。
 けして、疲れているから、その温もりを望んだ訳ではない。
 アイツが勝手に…やった事

 野外での簡単な食事を済ませ、陽射しが降り注ぐ滅多にない穏やかな昼下がり。大樹に凭れながら煙草を咥え、新聞を広げる。
 少し先では、猿と河童が向かい合って、どうやらカードでもしているらしい。時折「ヤッタ!」だの「イカサマだ」だのと声がする。
 耳に入るありふれた会話と、冬の日には珍しい暖かな風。短くなった砲身を地面に押し付けて、ゆっくりと瞳を閉じた。

「さんぞ?…寝てるの」
 顔の前に影が降りて、潜めた猿の声。面倒くせえから返事もしなかった。それから、隣に座る気配。まだ、俺が寝ているのか起きているのか、判断が付かないらしい。
 俺の中に悪戯心が芽生えたのは、偶々だ。
「さん、ぞ?」
 猿の肩に頭を落とすと、緊張した声が上がる。
 また無視。
「寝てる…んだよな」
 何の確認だ。と、突っ込みたくなる衝動を抑え、
「わっ、さんぞ!」
 受け止めるのを計算にいれて、前に倒れる。慌てて支えた腕によって、ゆっくりと奴の膝上に下ろされた。
 頭の上から感じる困ったような気配。見なくても解るその手は、所在無げに宙を泳いでる事だろう。

―――― おもしれぇ

 眠気なんぞ初めから無い、さて次はどうするか。そこへ降ってきたのは、
「三蔵、眠っちゃったんですか?」
「う、うん…多分」
「そうですか。外で昼寝するにはまだ寒いですから、コレ掛けてくださいね」
 その微かに笑いを含んだ声。

―――― チッ、気付いてやがる。

「ありがと、八戒」
 言葉と共にふわりと何かで身体を包まれた。そして俺は、目を開けるタイミングを、完全に失った。
 さて、どうしたものか…思案に暮れ始めたその時、
「あんま…無理しないで、な」
 小さな囁きと、髪を梳く感触。ゆっくりと、静かに優しく。
 悟空が与える温もりに誘われるように、微睡いが忍び寄る。
 全身の力が抜け瞼は重く、けれどひどく安らいだ気分。

 どうしてなんてのは、こっちが聞きてぇ。
 この瞬間にも、どこかで敵の目が光っているかもしれないのに、それでも、この穏やかな時間が続けばいいと思っている自分が、今、確実に存在するのだ。

―――― やめだ…面倒くせぇ

 起こるかどうかも解らない事よりも、この温もりに身を委ねると決めた途端、俺はあっさりと意識を飛ばし…
「いい絵だねぇ、写真でも撮っとけばいいネタになるぜ」

―――― クソ河童、ぜってー殺す

 だが…
 とりあえず今は寝る。


おわっとけ


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膝枕…いいなぁ(ヨダレ)
あ…
よしっ、次はサンゾーの膝枕だ!
花淋拝

   


使用素材 : photo【ひまわりの小部屋】